はじめに
はじめまして、エンジニアのA.Sです。6月に未経験エンジニアとして入社し、約半年間の研修期間の集大成として、業務フロー改善プロジェクトに企画段階から携わりました。本記事では、翻訳業務のプロセス全体を見直し、月50時間以上の削減を目指した取り組みをご紹介します。
翻訳作業が業務のボトルネックに
OJT期間中に事務部門での研修に参加した際、現場から翻訳業務に関する課題をきいたことが、今回のプロジェクトのきっかけとなりました。
ある現場では、翻訳が必要な書類の処理に1件当たり約30分を要し、毎月100時間以上(月200件以上)もの工数が発生していました。このフローでは、品質確保のためダブルチェック体制を採用していますが、実質的には1次と2次の両方で独立した翻訳作業が実施されており、同一書類に対して2回の翻訳が行われている状況でした。
【従来の翻訳業務フロー】
- 翻訳工程開始
翻訳が必要な書類が発生します。 - 1次工程
最初の担当者が翻訳作業を実施し、翻訳完了後に自身で内容をチェックします。この段階で、翻訳の正確性や表現の適切性を確認します。また、必要な翻訳内容を切り取って業務管理システムに入力します。 - 2次工程
1次工程を経た書類は、次に2次担当者に引き継がれます。しかし、2次担当者も元の書類から改めて翻訳作業を実施し、その後チェック作業を行います。また、必要に応じて1次工程で業務管理システムに入力された内容も確認します。 - 翻訳完了
2次工程のチェックが完了した時点で、翻訳業務が終了となります。

【特定した課題】
ヒアリングを進める中で、翻訳内容をファイルとして共有する仕組みが整っていないことが、すべての非効率性の原因であると考えました。具体的には、この仕組みがないことで以下が発生していました:
- 重複作業の発生
1次工程の翻訳結果を2次工程に引き継げないため、2次担当者は原本から再度翻訳せざるを得ず、「ダブルチェック」が実質的に「二重翻訳」になっていました。 - 翻訳結果の分散管理
翻訳結果を体系的に保管・共有できないため、必要な部分を切り取って業務管理システムに入力する作業が別途発生していました。 - 標準化の欠如とAI活用の非効率
担当者ごとに翻訳方法・手順が異なり、品質にばらつきが生じていました。導入済みのAIツールについても、簡易なプロンプトしか使用されておらず、1度のプロンプトですべての翻訳内容を把握できず複数回に分けて指示をしていたり、日本語訳がされなかったりなど、AIの能力を十分に引き出せていませんでした。
これらは単なる作業レベルの非効率ではなく、業務フロー設計そのものに起因する構造的な課題であると判断し、業務フロー全体の再設計を軸とした改善策を立案しました。
3つの改善アプローチ
アプローチ1:業務フローの再設計による重複排除
■ 翻訳工程の統合
重複していた翻訳作業を排除し、複数段階で行っていた翻訳を1回に集約することで、大幅な工数削減を実現しました。
■ マクロによる工程自動化とファイル化
フロー改善と併せて、1次工程の翻訳内容をファイルとして保存するマクロの作成を依頼し、整備しました。このマクロにより、1次工程の翻訳結果が確実にファイル化され、2次工程での参照が可能になりました。これが、次の「翻訳管理プロセスの一元化」の基盤となっています。
【効果】月50時間の削減


アプローチ2:翻訳管理プロセスの一元化
■ 集中管理の仕組み構築
アプローチ1で自動ファイル化した翻訳結果を、業務管理システム上で一元管理する仕組みを整備しました。原本書類と翻訳文書を紐づけて保管することで、過去の翻訳結果の効率的な再利用と工程間での円滑な翻訳結果の引継ぎが実現できました。
【効果】管理業務の効率化、品質の担保
アプローチ3:翻訳作業の標準化とAI活用の最適化
すでに導入されているAIを効果的に活用するため、AI活用の標準化に取り組みました。
■ AI活用の判断フロー設計
フロー改善により統合した翻訳工程に対し、書類特性に応じたAI活用の判断フローを構築しました。このフロー設計により、どの書類にどのAI機能を活用すべきか、担当者が迷わず判断できるようになりました。
【活用判断の基準】
- 書類の言語
- 書類のファイル形式(画像形式/PDF形式) など
■ 定型プロンプトの作成と共有
標準化されたテンプレートにより、プロンプトの入力の手間の削減を行うとともに、複数回の指示を不要とし、担当者による品質のばらつきを抑制しました。
■ 業務マニュアルの作成
フロー改善後の標準プロセスとAI活用のベストプラクティスをマニュアル化し、誰でも同じ品質で作業できる環境を整備しました。
【効果】品質の均一化、作業時間のさらなる短縮、翻訳精度の向上
将来を見据えた設計
今回の取り組みでは、現状の課題に対する改善に加えて、将来的な翻訳業務の完全自動化を視野に入れた設計としました。
最終的に目指す翻訳完全自動化フロー
翻訳・翻訳内容確認・翻訳内容を業務管理システムにアップロードの手順をすべてAIが担うことで、翻訳から管理まですべてを自動化することができればよいのではないかと考えます。
■ 現場ニーズの詳細ヒアリング
現状の課題に加えて、今後翻訳自動化が可能となった際に希望するシステムの設計について、業務担当者へのヒアリングを行いました。
■ システム連携の構想設計
改善後のフローをベースに、業務管理システムでの翻訳表示イメージ(モックアップ)を作成、原本閲覧と翻訳表示を同一画面で行える理想的なUIを設計しました。この先行設計により、次フェーズでのシステム実装をスムーズに進められる基盤を構築しました。

今回のプロジェクトで実現できたこと
✓ 月50時間以上の作業時間削減見込み (100時間/月 → 50時間/月以下、削減率50%以上)
【削減効果の構成】
- フロー再設計:月50時間削減
- 重複翻訳作業の排除による構造改善
- マクロ導入による定型作業の自動化
- AI活用の最適化:作業時間の更なる短縮
- 定型プロンプトによる翻訳精度向上
- 一度の指示で翻訳が完了する効率化
- 翻訳スピード向上による継続的な時短効果
✓ 翻訳管理の一元化による管理・再利用性の向上
✓ 完全自動化に向けた基盤構築
この改善により、担当者はより付加価値の高い業務に集中できる環境が整いました。
今後の展望
今回の業務フロー改善は、「翻訳完全自動化」への第一歩です。今後、
- AI技術のさらなる活用による翻訳精度・速度の向上
- 業務管理システムとの完全連携による自動翻訳の実現
- 多言語対応の拡充
を進めることで、より効果的な業務環境を実現していくことができればいいのではないかと考えます。
おわりに
今回のプロジェクトで学んだ重要なポイントは、
- 業務フロー全体を俯瞰し、根本的な非効率性を見極めること
- 現場のニーズを徹底的に理解すること
- 段階的なアプローチで着実に成果を出すこと
- 既存ツールも使い方次第で効果が大きく変わること
表面的な作業効率化ではなく、業務プロセスそのものを見直すことで、大きな成果を生み出せることを実感しました。
この経験を、今後の業務改善にも活かしていきたいと思います。